GLASSBACCA Journal vol.4
日本酒評価用標準化グラスSAKE TASTING GLASSの誕生秘話に迫る
日本酒を愛する皆さま、こんにちは。
この度グラスバッカは独立行政法人酒類総合研究所の開発協力により、日本酒を愛するすべての方に捧げる“SAKE TASTING GLASS”を開発しました。
SAKE TASTING GLASSはこれからの日本酒の基準をつくり評価の統一感、納得感を生むことで、日本酒を愛するすべての人が共通言語で語ったり学んだり、日本酒の海外販路拡大の手助けをしたりすることを目指しています。
今回の記事では日本酒の今後の発展を祈りながら開発された、日本酒における評価用標準化グラス“SAKE TASTING GLASS”の誕生秘話や魅力に迫ります。
日本のグラス屋“GLASSBACCA”の使命は何か
GLASSBACCAは日々グラスばっかりと向かいあい、「グラス馬鹿」なスタッフが集結してバッカナーレ(お祭り)気分でモノづくりを行う日本のグラス屋です。
そんなグラス馬鹿な我々は日々グラスと向き合う中で、「日本のグラス屋であるGLASSBACCAの使命は何か?」と常に考えていました。「日本に貢献するグラス屋でありたい」「そのために何をすべきか」と日々模索する中で、日本の誇りである國酒の役に立つことをしたいという想いを抱くようになったのです。
INAOグラスに匹敵する日本酒の基準となるグラスをつくりたい
「GLASSBACCAがグラスで國酒に貢献できることは何だろうか」と模索したところ、我々は日本酒が抱えている課題に注目しました。
日本酒品評会で基準になるグラスがない
私たちが注目した日本酒の課題は、「日本酒には日本酒品評会で基準になるグラスがない」ということです。
世界各国で愛されているワインには、INAO(国立原産地名称研究所)グラスという国際規格のテイスティンググラスが存在します。このINAOグラスはワインをテイスティングする場合に、個性が異なるワインを全て同じ条件でテイスィングできるグラスです。
飲み物はグラスの影響を大きく受けるため、コンクールや品評会でグラスを統一しなければ飲み手により感じ方や意見が大きく変わってしまいます。INAOグラスの誕生によりワインテイスティングの基準が生まれワインを学ぶ人や伝える人が増加した結果、ワインがさらに世界中で愛される飲み物になったのは言うまでもありません。
このようにワインには基準となるグラスがありますが、残念なことにこれまで日本酒にはINAOグラスのような基準になるグラスがありませんでした。そこでGLASSBACCAは「日本酒に従事する人や学ぶ人、そして日本酒をこよなく愛する人に向けて、日本酒の基準になるグラスを開発したい」と決意したのです。
基準になるグラスがないとどうなる?
そもそも日本酒の評価を下す場合に、基準になるグラスがないとどうなるのでしょうか?これまで日本酒の品評会や展示会では、テイスティングする際にお猪口やプラカップ、リースリンググラス、INAOグラスなどを使用していました。
これらの酒器に同じ日本酒を注ぎ、飲み比べをするとどうでしょう?使用する酒器により香りや味わいの感じ方は大きく異なり、「同じ銘柄と言われなければ気が付かない」という方が続出するでしょう。
ではそれを前提に品評会などで酒器が定まってない場合、どうなるでしょうか?テイスターが同じ酒器を使っていなければ、それぞれ全く異なる感想や評価を下すことになるのは想像に難くありません。
つまり日本酒を正しく評価したり伝えたりするためには、日本酒の基準となるグラスは必要不可欠なのです。品評会や展示会などにおいて製造者や流通のプロが基準にのっとったグラスを使用すれば、日本酒を伝える人や学ぶ人にとって納得のいく共通言語が生まれることでしょう。
なぜINAOグラスではダメなのか?
世界的に認知度が高く、ワインにおいては素晴らしい基準となるINAOグラス。「日本酒もINAOグラスを使用すれば、簡単かつ海外の方にもわかりやすいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
たしかにINAOグラスは知名度も高く、実際に品評会やセミナーで使用される場合もあります。しかしながらINAOグラスは、「日本酒に向いていない」と我々は考えているのです。
なぜなら日本酒は非常に繊細なお酒だからです。INAOグラスは香りが籠りやすく、日本酒のもつ脂肪酸臭などの重たい成分が際立ってしまい、日本酒本来のよさを打ち消してしまいます。
そのため我々はワインのINAOグラスにヒントを貰いながらも、日本酒には日本酒に合った独自の日本酒評価用標準化グラスが必要だと考えました。
また日本酒の酒蔵様や専門家の方々に、試験的に複数のグラスを用いたきき酒をして頂いたところ、「一般的なワイングラス(従来のINAO グラス)よりも日本酒をきき酒する場合は適した形状があるのではないか」と後押しのコメントをいただき我々の想いはより確固たるものになりました。
日本酒評価用標準化グラスと認められるために…
「國酒である日本酒の基準となるグラスは、日本のグラスメーカーが造るべきだ」という想いを胸に、GLASSBACCAは日本酒評価用標準化グラスの開発を目指します。
しかし突然現れたグラスが、いきなり「日本酒評価用標準化グラス」として認められるのは、難しいことでしょう。ここでは、GLASSBACCAが日本酒評価用標準化グラスと認められるために行った取り組みをご紹介します。
独立行政法人酒類総合研究所からの開発協力
まず日本酒評価用標準化グラスを開発するにあたって、日本唯一の公的な酒研究機関である独立行政法人酒類総合研究所から開発協力をして頂くことになりました。
独立行政法人酒類総合研究所は明治時代に創立された国立醸造研究所で、酒類の品質評価や分析、鑑定をおこない日本のお酒に関するナショナルセンターとしての役割を担っています。
日本酒の品質評価に関する専門的な知識・経験を有する石渡英和氏に監修を依頼
SAKE TASTING GLASSの開発にあたっては、元国税局主任鑑定官の経歴をもち日本酒の品質評価に関する専門的な知識・経験を有する石渡英和氏に監修をお願いしました。これにより評価に関する専門的な知識や意見をもとに、グラスの開発に着手することができました。
2度にわたる試験を実施し、2種の試作グラスを経てリリース
SAKE TASTING GLASSは2度にわたる試験を実施し、リリースしています。試験には独立行政法人酒類総合研究所の研究員の方や国税局主任鑑定官の経歴をもつ石渡英和氏に加え、日本酒組合中央会の技術委員会の方々にも意見を頂く機会を得ました。
この試験によりたくさんの日本酒の専門家の方々とのディスカッション、テイスティングを行いながら、2回試作グラスをつくりました。試作のたびに多くの意見を頂きながら、SAKE TASTING GLASSをリリースしています。
SAKE TASTING GLASSのこだわりポイント
日本酒のプロフェッショナルの方々の力を借りて、誕生したSAKE TASTING GLASS。
SAKE TASTING GLASSは「日本酒を伝える人や学ぶ人においての共通言語となること」「正しい知識を顧客に伝えられるグラスをつくること」を目標に、試行錯誤を繰り返して誕生しました。
ここではSAKE TASTING GLASSのこだわりポイントを紹介します。
お猪口やプラカップでは体感できない日本酒の本来の香りや味わいを感じられる
日本酒には細やかな香りの要素がありますが、お猪口やプラカップではなかなか体験が難しいです。しかしSAKE TASTING GLASSはグラスのフォルムにこだわり、香りや味わいをしっかり引き出すように設計しています。
ボウルの形状はややくびれており、香りが程よくグラスにこもるようにしています。グラスに香りがこもることで、お猪口やプラカップで感じられない日本酒の繊細な香りの要素が楽しめるのです。
口当たりがよく口に含むお酒の量をコントロールできる飲み口
テイスティングを行ううえで、口に含むお酒の量をコントロールするのは重要なこと。口に含む量が異なるだけで感じ方が変わってしまったり、口に含むお酒の量が多いと味わいの要素が感じ取りにくくなったりするからです。
そのためSAKE TASTING GLASS は舌の手前に酒を落としやすいように設計しており、舌全体で細やかな味わいを感じ取れます。
また口当たりもなめらかで、テイスティングの際にストレスがありません。
スワリングをスムーズに行える絶妙な高さと太さの脚
日本酒をテイスティングするときは、ワイン同様にスワリングをするのも大切です。スワリングを行うことで香りの要素がより感じやすくなるのです。
SAKE TASTING GLASSはお猪口やプラカップと違い、スワリングをスムーズに行える絶妙な高さの脚がついています。脚は細すぎず太すぎない程よい太さで安定感もあります。グラスが倒れにくいため、複数の日本酒をテイスティングする品評会やセミナーでも使いやすいです。
計量しやすい形状なのでセミナーや飲食店などでも大活躍
SAKE TASTING GLASSはグラスがくびれている部分まで注ぐと50ml、最も膨らんでいる部分まで注ぐと30mlになります。そのためセミナーや飲食店などで日本酒を用意する際も、オペレーションがスムーズで非常に便利です。
「日本酒が世界中で愛されること」を目指して
SAKE TASTING GLASSは「日本酒が世界中で愛されること」を目指して、日本酒イベントや日本酒コンペティションなど国内外問わず多くの日本酒好きの方にお披露目済みです。
国内イベントでは日本酒通な参加者から「香りが取りやすい」「他のアイテムに比べ味を感じ取りやすい」と意見が寄せられています。
またパリの日本酒コンペティション「Kura Master」では、フランスの飲料メーカーの方や小売店・卸の方、飲食店の方、そして日本酒が大好きなフランス人の方に紹介を行い、お酒に目がないフランスの方々から高評価をいただきました。
おわりに
今回の記事では日本酒の今後の発展を祈りながら開発した、日本酒における評価用標準化グラス“SAKE TASTING GLASS”の誕生秘話や魅力を紹介しました。
多くの専門家が携わり日本酒の魅力を最大限に引き出すよう設計したSAKE TASTING GLASS。日本酒の評価会はもちろんセミナーや酒蔵でのテイスティング、日本酒を楽しみたい方など、日本酒を愛するすべての方に自信をもっておすすめできるグラスです。
気になった方は、ぜひSAKE TASTING GLASSの魅力を体感してみてくださいね。